タロット市場の中心はヨーロッパと北米だが、実は中南米でもタロットが浸透している場所がある。
アルゼンチンやチリ(タロット研究家、映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキーもチリ出身)は、南米のなかではタロットをリーディングする人が多い地である。ほとんどの人は、占いやカードゲームにタロットを使う。
アルゼンチンの友人の家族には、「お抱えのタロットリーダー」がいたりもする。「うちの子が学校でいじめられている。どうしてあげるのがベストか」「病気の母にいま何をしてあげたらよいか」などと迷ったり、解決すべき問題が生じたときに、電話一本かけてすぐにタロットリーダーに会いに行く。そして、聞いた説明をもとに、行動を起こすことが習慣化となっている。
私がアルゼンチンのサン・フアンに滞在中のとき、ある友人に付き添ってタロットリーダーの家を訪ねたことがある。ミドルクラスの住宅街の一軒家。車庫にある家人用の小さな玄関から入って、居間のような場所に案内され、待っているとタロットリーダーが登場。私の友人は顔馴染みで、そのタロットリーダー(Reader)は彼女の家庭状況を把握しているから、タロットリーダーはあまり質問をせずにカードを選びながら具体的な策について話し始める。
そのリーダーはタバコを口にくわえながら、タルヘタ・エスパニョーラ(Tarjeta Española)と呼ばれるカードを両手にもって、忙しくカードを左右の手に往来させていた。ときどきタバコの煙を口から豪快に吐き出しながら、しゃべり続ける(日本じゃ考えられんな、面白い)。デッキを作って並べる方法ではなく、基本、両手にカードをもって、決まった数のカードを左へ、右へ移動させながら絵柄を見ているようだった(どういうやり方なのだ、これは!)。
このタルヘタ・エスパニョーラ(Tarjeta Española)は、近くのボデガ(生活雑貨を売る店)だったら、どこでも売っているようなカードらしい。値段も数百円くらい。ボデガは日本だとコンビニみたいなものだから、タロットがここの人たちの生活にどれだけ馴染んでいるかが分かる。おそらく多くの人は、このタルヘタ・エスパニョーラをカードゲームのように使って遊んだり、独学でタロットを学んだ人が自分や友人たちと楽しむくらいの位置づけなのだろう(タロットカードでゲームするってのも日本ではやらないけど)。
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